PFN岡野原氏、財務総研で生成AIの進化と国産AIを講演
「生成AIニュースメモ」は、生成AIの最新ニュースを要点3行+詳細メモで記録していくシリーズです。関連するG検定キーワード解説への内部リンク付きで、最新動向のキャッチアップと試験の時事対策に使えます。
- 1同じ賢さのAIを提供するコストは1年あたり1/100〜1/1000に低下し、長期タスク処理能力も指数的に伸びていると指摘
- 2AIデータセンターを「トークン工場」と捉え、1GW=約7.5兆円分の売上=23兆トークン/日=100万GPUという換算式を提示
- 3国産生成AIについて反対論と賛成論を整理し、供給の他国依存回避やデジタル赤字解消などから開発継続の重要性を主張
財務省財務総合政策研究所は2026年4月24日、Preferred Networks(PFN)共同創業者で代表取締役社長の岡野原大輔氏を講師に迎えた講演会「生成AIの進化と未来 — 国産AIとフィジカルAI」を開催しました。講演では、AIの進化速度とコスト低下のトレンドから、AIデータセンターを「トークン工場」と捉える視点、デジタル赤字の構造分析を踏まえた国産生成AI・国産AI半導体の必要性、そしてAI時代の人間の働き方まで、幅広いテーマが一本の筋道で語られました。
AIの進化の現在地
- ▸進化の要因 — AIの学習に使われる計算力は毎年4.6倍、学習データは数十兆文字、研究は年間数十万報の規模
- ▸試験レベル — 東大2025年入試の検証でChatGPT o1は文系379点・理系374点と各類の合格最低点を上回り、DeepSeek R1も理科3類で369点と合格水準に到達
- ▸コスト低下 — 同じ賢さを提供するコストは1年あたり1/100〜1/1000に(今1万円かかるものが来年には10円になる世界)
- ▸長期タスク — METRの分析では処理できるタスクの長さが約4ヶ月ごとに倍増し、Claude Opus 4.6は人が12時間かかるタスクを50%の確率で成功
- ▸自己改善 — 自然言語の指示書だけでLLMがLLMの学習を自律的に改善し続ける「AutoResearch」の事例も紹介
AIの作られ方の変化
事前学習のスケーリング則による改善は現在のスケールで頭打ちになりつつある一方、AI自身を使った学習データの品質改善や、数学・プログラミング・STEMなど検証可能な報酬に基づく強化学習による推論能力の改善が急速に進んでいると整理されました。強化学習の投入規模は事前学習に匹敵し、今後は凌駕すると想定されています。
学習インフラの面では、データセンターは百メガワット〜ギガワット級に達し、Meta・Google・Microsoft・Amazonの4社だけで四半期ごとの設備投資額が15兆円近くにのぼることが示されました。米国のAIデータセンター向け設備投資はGDP比1%を超えています。
トークン工場という見方
- ▸需要 — 現在のLLM需要の半分以上はソフトウェア開発支援で、その市場規模は7.5兆〜75兆円と試算
- ▸利用規模 — OpenAIは週次利用ユーザー9億人超・年換算売上240億ドル、Anthropicは年換算売上140億ドル
- ▸トークン工場 — AIデータセンターは電力・施設・AIサーバー・AIモデルを投入し、「知識の通貨」であるトークンを産出する工場と位置づけ
- ▸換算式 — 1GW=約7.5兆円分の売上ポテンシャル=23兆トークン/日=100万GPUという目安を提示
- ▸供給制約 — 需要ではなく計算資源・電力資源の供給制約が今後も続くとし、電力あたりのトークン生成効率が最重要と強調
国産生成AIの必要性
デジタル赤字については、国内需要を国内データセンターで賄っても価値の7〜8割は海外へ流出し、最大の流出項目は粗利8〜9割とされるAI半導体だという概算が示されました。また、海外LLMには日本語で聞くと竹島の領有権は日本と答え、英語で聞くと異なる回答をするといった言語による非対称性があることも紹介されました。
国産生成AIについては、「フロンティアモデルはお金を払えば利用できる」「高性能なオープンモデルが多数存在する」「数百億〜数千億円のコストがかかる」「結果が出る保証はない」という反対論を先に整理した上で、AIの供給を他国に依存しない、開発ノウハウの蓄積、国際情勢に依存しない閉域運用、バイアスの排除、デジタル赤字の解消、日本の文化・社会規範の保護という6つの理由を挙げ、生成AIの開発を国内で継続することは非常に重要だと結論づけられました。
PFNの取り組み
- ▸PLaMo — 世界最高クラスの日本語性能をうたう純国産の生成AI基盤モデル。ガバメントAI「源内」で利用が始まり、日本語指示追従ベンチマークJFBenchでは31Bモデルが海外トップモデルに匹敵
- ▸Matlantis — 材料開発のための汎用原子レベルシミュレーター。DFT計算と比べ2000万倍高速で、世界150超の組織が利用
- ▸カチャカプロ — 国内AMR(自動搬送ロボット)の台数シェア1位(47.9%)
- ▸MN-Core — 自社開発のAI半導体シリーズ。電力効率ランキングGreen500で世界1位を3度獲得し、3D積層DRAMを採用したLLM推論向け「MN-Core L1000」を2027年に提供予定
AI時代の働き方
講演の締めくくりでは、AI時代の人間の仕事は「ハーネス設計」に移るとまとめられました。目標や制約を定量化してAIに渡すこと、AIに何を見せてよいか・何をしてよいかというデータアクセスや操作権限を管理すること、仕事を適切な粒度のタスクに分解してAIにどこを任せるかを設計すること、そして任せきりにせず逐次監査・介入することが重要になるという整理です。
関連キーワードの解説記事で、背景となる技術・概念を確認できます。
最新のまとめ号はこちらです。その月の生成AIニュースの全体傾向と、G検定試験風の理解度チェック問題を1本にまとめています。
