「広告費を増やしたら売上はどれくらい伸びるのか?」——1つの原因候補と1つの結果の関係を直線で捉えるのが単回帰分析です。回帰分析のいちばん小さな最小構成であり、ここでの考え方(直線の式・最小二乗法・残差)がそのまま重回帰や機械学習全体の土台になります。
📖 ひと言でいうと
単回帰分析は、説明変数が1つだけの線形回帰モデルです。1つの入力(説明変数)と1つの出力(目的変数)の関係を最もよく表す直線 y = ax + b を求め、入力から出力を予測します。
料理に例えると「材料1つだけのレシピ」です。要素が1つしかないからこそ、「入力が1増えると出力がどれだけ変わるか」という関係が傾きaとしてむき出しで見えます。回帰分析の本質を学ぶには、この最小構成から始めるのが一番の近道です。
🖼 1枚でわかる単回帰分析
📘 公式テキストの説明
説明変数が1つだけの線形回帰モデル。1つの入力(説明変数)から1つの出力(目的変数)を予測する最も基本的な回帰分析の手法であり、入力と出力の関係を最もよく表す直線を求める。例えば、身長から体重を予測したり、広告費から売上を予測したりする問題が単回帰分析にあたる。説明変数が複数ある場合は重回帰分析を用いる。
定義の核は「説明変数が1つだけ」です。線形回帰という大きな枠組みの中で、入力の数が1つのものを単回帰分析、複数のものを重回帰分析と呼び分けます。つまり単回帰と重回帰の違いは手法の原理ではなく説明変数の数です。この一点を軸に、用語(説明変数・目的変数)と例(身長→体重、広告費→売上)を肉付けしていきましょう。
🔍 しっかり理解する
説明変数と目的変数
回帰分析では、予測に使う側の変数を説明変数(独立変数)、予測したい側の変数を目的変数(従属変数)と呼びます。「広告費から売上を予測する」なら、広告費が説明変数、売上が目的変数です。どちらがどちらかを取り違えると式の意味が変わってしまうため、問題文の「〜から〜を予測」という表現から2つの変数の役割を読み取る練習をしておきましょう。
直線はどうやって決まるのか:最小二乗法
データ点は普通、一直線上には並びません。そこで「各データ点と直線のズレ(残差)」に注目します。残差をそのまま足すと正負が打ち消し合うので、二乗してから合計し、この残差二乗和が最小になる傾きaと切片bを選びます。これが最小二乗法です。二乗のおかげで、大きく外れた点ほど強く直線を引き寄せる性質もあります。
傾きの解釈と当てはまりの評価
求めた直線は「予測式」であると同時に「関係の要約」です。傾きaは「説明変数が1単位増えたとき目的変数が平均的にどれだけ変わるか」を表します。切片bは「説明変数が0のときの予測値」ですが、データの範囲によっては現実的な意味を持たないこともあります(身長0cmの体重など)。
また、直線がデータをどの程度説明できているかは決定係数(R2乗)で評価します。決定係数は0から1の値を取り、1に近いほど直線の当てはまりが良いことを意味します。決定係数が低ければ、「この1変数だけでは目的変数を説明しきれない」というシグナルです。そこから、季節や価格といった別の要因も式に取り込む重回帰分析の検討へつながっていきます。
単回帰の限界
現実の現象が1つの要因だけで決まることはまれです。売上は広告費のほかに季節・価格・競合の動きにも左右されますし、体重も身長だけでなく年齢や生活習慣の影響を受けます。単回帰は関係を1変数に単純化して見るための道具であり、他の要因の影響はすべて誤差として扱われます。この限界こそが、説明変数を複数持つ重回帰分析が必要になる理由です。
💡 具体例で考える
公式テキストの例のひとつ、広告費から売上を予測するケースを具体化してみます。ある通販会社が過去12か月の月次データを散布図にしたところ、右上がりの傾向が見え、単回帰分析で「売上 = 5×広告費 + 300(万円)」という式が得られたとします。この式からは2つのことが読めます。①予測: 来月広告費を100万円かけるなら売上は約800万円と見込める。②関係の要約: 広告費1万円あたり売上が約5万円増えるペースだった。ただしこれは過去データの範囲内での話で、広告費を10倍にしても式のとおり伸びる保証はありません(市場の飽和など、直線が成り立たなくなる領域があるためです)。
身長から体重を予測する例も同様で、健康診断のデータに直線を当てはめれば「身長1cmあたり体重が平均何kg増えるか」という集団の傾向が1本の直線に要約されます。
⚠️ よくある誤解・紛らわしい用語
- 重回帰分析との違い — 原理は同じ線形回帰で、違いは説明変数の数だけです。1つなら単回帰、複数なら重回帰。「単回帰を変数ごとに何回もやれば重回帰と同じ」ではない点は重回帰分析の記事で扱う重要論点です。
- 相関分析との違い — 相関係数は2変数の関係の「強さ」を−1〜1の数値で表すだけですが、単回帰分析は「予測式(直線)」まで求めます。関係の強さを測るのが相関、予測の道具を作るのが回帰です。
- 「関係がある=因果関係」ではない — 単回帰で強い関係が出ても、それは因果の証明にはなりません。アイスの売上とプールの事故数のように、背後の共通要因(気温)が両方を動かしている場合があります。
- 範囲外への予測(外挿)の危険 — 学習に使ったデータの範囲を大きく外れた入力への予測は当てになりません。直線関係はあくまで観測された範囲での近似です。
📝 試験でのポイント
- 定義問題は「説明変数が1つだけの線形回帰モデル」がキーフレーズです。「1つ」の部分を「複数」に変えた選択肢は重回帰分析の説明です。
- 事例文から単回帰か重回帰かを判定させる問題では、予測に使う変数の数を数えるのが解法です。
- 説明変数・目的変数という用語の対応(どちらが入力か)は穴埋めで問われます。
- 最小二乗法・決定係数といった周辺用語が同じ文脈で出題されることがあります。
📚 まとめ
単回帰分析は、説明変数1つ・目的変数1つの最も基本的な回帰分析で、両者の関係を最もよく表す直線を最小二乗法で求めます。傾きは「入力1単位あたりの出力の変化」として解釈でき、予測と関係の要約の両方に使えます。身長→体重、広告費→売上のような1対1の関係が典型例です。説明変数が複数になったら重回帰分析の出番——この橋渡しまで含めて覚えておきましょう。
