身長が高い人ほど体重も重い——このような「2つの変数が一緒に動く傾向」を1つの数値で表すのが共分散です。相関係数や主成分分析の土台になる重要指標ですが、単位に依存するというクセもあります。計算の仕組みから相関係数との関係まで、具体的な数値例で解説します。
📖 ひと言でいうと
共分散とは、2つの変数が「同じ方向に動くか、逆方向に動くか」を表す指標です。それぞれの変数の平均からのずれ(偏差)を掛け合わせて平均することで計算し、正なら同方向、負なら逆方向、0付近なら直線的な関係が薄いことを意味します。
2人3脚にたとえると、共分散は「2人の足並みがどれだけ揃っているか」です。2人が同時に前へ出る(両方とも平均より上)なら正、片方が前でもう片方が後ろなら負、バラバラなら0付近になります。
🖼 1枚でわかる共分散
📘 公式テキストの説明
共分散とは、2つの変数がどのように一緒に変動するかを示す指標です。たとえば、身長と体重の関係を考えると、身長が高い人ほど体重が重い傾向がある場合、これらのデータには「正の共分散」が見られます。逆に、片方の値が大きくなるともう片方の値が小さくなる傾向がある場合には「負の共分散」となります。共分散の計算は、各変数の平均値からの差を掛け合わせ、その平均を取ることで行われます。正の値が出れば、2つの変数が同じ方向に変動することを示し、負の値は逆方向に変動することを意味します。共分散の値がゼロに近い場合は、変数間に明確な相関がないことを表しますが、これは必ずしも「関係がない」とは言い切れません。ただし、共分散には単位の影響を受ける欠点があり、値が大きいからといって必ずしも強い関係を示すわけではありません。このため、より解釈しやすい指標として、共分散を標準偏差で割った「相関係数」がよく使われます。相関係数は-1から1の範囲で変動し、変数間の関係の強さと方向をより明確に示します。
押さえるべきは、①計算方法(偏差同士の積の平均)、②符号の解釈(正=同方向、負=逆方向)、③単位に依存するため大きさの比較には使えず、標準化した相関係数で補う——という3点です。なお相関係数は、正確には共分散を「2つの変数それぞれの標準偏差の積」で割って求めます。
🔍 しっかり理解する
なぜ「偏差の積」で一緒の動きが測れるのか
偏差とは「その値が平均からどれだけ上か下か」です。2つの変数が同方向に動く傾向があるなら、片方が平均より上のときもう片方も上(正×正=正)、片方が下のときもう片方も下(負×負=正)となり、積は正が多くなります。逆方向なら正×負=負が多くなる。つまり偏差の積の平均(=共分散)の符号が、そのまま「足並みの向き」を表すのです。
実際に計算してみましょう。3人の数学と英語の点数が(50, 60)、(60, 70)、(70, 80)だとします。数学の平均は60、英語の平均は70です。
- 偏差の積: (50-60)×(60-70) = (-10)×(-10) = 100
- 偏差の積: (60-60)×(70-70) = 0×0 = 0
- 偏差の積: (70-60)×(80-70) = 10×10 = 100
合計200をデータ数3で割ると、共分散は約66.7。正の値なので「数学ができる人ほど英語もできる傾向」と読めます。なお、標本から計算する場合はデータ数の代わりに「データ数-1」で割る流儀(不偏共分散)もありますが、符号の解釈は同じです。
弱点は「単位に依存する」こと
上の例で英語の点数を100点満点から1000点満点に換算する(すべて10倍する)と、共分散も10倍の約667になります。関係の強さは何も変わっていないのに、値だけ膨らんでしまう——これが「単位の影響を受ける」という共分散の欠点です。共分散の絶対値を見て「関係が強い/弱い」と判断することはできません。
相関係数への橋渡し
- 偏差の積の平均。単位(cm×kgなど)を持つ
- 値の範囲に制限がなく、大きさの解釈が困難
- 符号(向き)の情報として使う
- 共分散を2つの標準偏差の積で割ったもの
- 必ず-1〜1に収まり単位に依存しない
- 向きと強さの両方を比較できる
先ほどの例で確かめると、数学・英語とも標準偏差は約8.16なので、相関係数 = 66.7 ÷ (8.16×8.16) = 1.0。3人の点数が一直線に並んでいる(英語=数学+10点)ため、完全な正の相関になるわけです。共分散は「向きは分かるが強さは比べられない生の値」、相関係数は「-1〜1に標準化して強さも比べられる値」と整理しましょう。
💡 具体例で考える
気温とおでんの売上。コンビニの日次データで「気温」と「おでんの売上」を集計すると、気温が高い日ほど売上が低い傾向、つまり負の共分散が観測されます。一方「気温とアイスの売上」は正の共分散。符号を見るだけで「どちらの向きに連動する商品か」が分かるため、需要予測の特徴量選びの出発点になります。
主成分分析(PCA)の土台。機械学習で次元削減に使われる主成分分析は、全変数ペアの共分散を並べた「分散共分散行列」から、データが最も大きく広がる方向を見つける手法です。共分散は単独の統計量としてだけでなく、多変量解析や機械学習アルゴリズムの内部部品として働いています。
⚠️ よくある誤解・紛らわしい用語
- 「共分散が大きい = 関係が強い」ではない — 共分散は単位に依存するため、絶対値の大きさで強さを判断できません。強さの比較には相関係数を使います。
- 「共分散が0付近 = 無関係」ではない — 共分散が捉えるのは直線的な関係だけです。U字型のような非直線の関係があっても0付近になることがあります。
- 分散との混同 — 分散は「1つの変数の散らばり」、共分散は「2つの変数の連動」です。実は同じ変数同士の共分散を取ると分散に一致します。
- 相関と因果の混同 — 共分散や相関係数が正でも、因果関係があるとは限りません(疑似相関の可能性)。あくまで「一緒に動く傾向」の指標です。
📝 試験でのポイント
- 「2つの変数が一緒に変動する傾向を示す指標」という定義から共分散を選ばせる問題が基本形です。
- 「正の共分散は同方向、負の共分散は逆方向の変動を意味する」という符号の解釈は頻出ポイントです。
- 「相関係数は共分散を標準偏差(の積)で割って-1〜1に標準化したもの」という関係式を問う問題が想定されます。
- 「共分散の値が大きいほど関係が強い」という選択肢は、単位依存性の欠点を根拠に誤りと判断できるようにしましょう。
📚 まとめ
- 共分散は2変数の「平均からのずれの積」を平均した、連動の向きを表す指標。
- 正=同方向、負=逆方向、0付近=直線的な関係が薄い(ただし無関係の証明ではない)。
- 単位に依存するため強さの比較には使えず、標準偏差の積で割った相関係数(-1〜1)で補う。
- 分散共分散行列として主成分分析など機械学習の内部でも使われる基礎部品です。
