「平均年収」と聞いて実感とずれを感じたことはありませんか。ごく一部の高所得者が平均を押し上げるため、「真ん中の人」の実態は平均値では見えにくいのです。そこで活躍するのが、データを並べたときのちょうど真ん中の値——中央値です。求め方、外れ値に強い理由、平均値・最頻値との使い分けまで解説します。
📖 ひと言でいうと
中央値とは、データを小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中に位置する値のことです。メジアンとも呼ばれ、平均値・最頻値と並ぶ「データの中心を表す代表値」の一つです。
マラソン大会にたとえると、参加者99人のうち50位の人のタイムが中央値です。優勝者がどれだけ速くても、最下位がどれだけ遅くても、50位の人のタイムは変わりません。この「端の極端な値に引きずられない」性質が中央値の最大の持ち味です。
🖼 1枚でわかる中央値
📘 公式テキストの説明
中央値は、データを小さい順に並べた際に、ちょうど真ん中に位置する値のことを指します。例えば、データが「1, 2, 3, 4, 5」の場合、中央値は「3」です。一方、データの数が偶数である場合、中央に位置する2つの値の平均が中央値となります。例えば、「1, 2, 3, 4, 5, 6」というデータでは、中央の2つの値である「3」と「4」の平均である「3.5」が中央値となります。中央値は、外れ値(極端に大きい値や小さい値)の影響を受けにくい特徴があります。このため、特にデータに極端な値が含まれる場合に、平均値よりもデータの中心をより正確に反映することができます。例えば、家計所得などでは、平均よりも中央値の方が実際の状況を正確に示すことが多いです。なぜなら、一部の非常に高い所得が全体の平均を押し上げることがあるからです。
押さえるべきは3点です。①求め方は「並べて真ん中」、データ数が偶数のときだけ中央2つの平均を取る。②外れ値の影響を受けにくい(頑健である)。③そのため所得のように分布が偏るデータでは平均値より実態を表しやすい。この3点がそのまま試験の問われどころになります。
🔍 しっかり理解する
求め方の手順
たとえば5人のテストの点が「70, 55, 90, 60, 65」なら、並べ替えて「55, 60, 65, 70, 90」、真ん中の3番目にある65が中央値です。6人目(80点)が加わったら「55, 60, 65, 70, 80, 90」となり、中央の65と70の平均である67.5が中央値になります。
外れ値に強い理由
年収データ「300, 350, 400, 450, 3000」(万円)で比べてみましょう。平均値は(300+350+400+450+3000) ÷ 5 = 900万円ですが、5人中4人は450万円以下で、900万円は誰の実態も表していません。一方、中央値は真ん中の400万円で、「普通の人」の姿に近い値です。
理由は計算の仕組みにあります。平均値は全データの値を足し込むため、1つの巨大な値がそのまま結果に効きます。中央値が使うのは「順位」だけなので、最大値が3000万円でも3億円でも、真ん中の位置にある値は変わりません。この性質を「外れ値に対して頑健(ロバスト)である」といいます。
平均値・最頻値との三者関係
代表値には中央値のほかに、全データの合計を個数で割る平均値、最も多く出現する値である最頻値があります。左右対称できれいな分布(正規分布など)では3つはほぼ一致しますが、分布が偏ると別々の値になります。所得のように右側に裾を引く分布では、多くの場合、最頻値 < 中央値 < 平均値の順に並びます——山のピーク(最頻値)より真ん中の人(中央値)が少し右、高所得者に引っ張られた平均値がさらに右、というイメージです。3つの代表値のずれ方から、逆に分布の偏りを読み取ることもできます。
💡 具体例で考える
厚生労働省の所得統計は中央値の意義を示す定番の実例です。世帯所得の統計では平均値と中央値が毎回大きく食い違い、中央値は平均値より百万円以上低くなります。さらに「平均所得以下の世帯」が全体の6割程度を占めるのが通例で、平均値が「多数派の実感」からずれることがよく分かります。ニュースで「平均○○円」を見たら「中央値はいくらか?」と考える習慣は、データリテラシーの第一歩です。
機械学習の前処理でも中央値は活躍します。欠損値を埋める(補完する)とき、外れ値を含む特徴量では平均値ではなく中央値で埋める方が、極端な値に歪められない安全な選択になります。scikit-learnの補完機能にも中央値による補完(strategy="median")が標準で用意されています。
⚠️ よくある誤解・紛らわしい用語
- 平均値との混同 — 平均値は「合計 ÷ 個数」、中央値は「並べて真ん中」。計算方法がまったく異なり、偏った分布では値も大きくずれます。
- 最頻値との混同 — 最頻値は「最も多く現れる値」で、順位の真ん中とは別物です。「真ん中 = 中央値、最多 = 最頻値、合計÷個数 = 平均値」と区別しましょう。
- 「中央値が常に優れている」わけではない — 中央値は順位しか見ないため、真ん中以外の値の情報を捨てています。外れ値のない対称な分布なら平均値の方が情報を活かせますし、合計額の議論(売上総額など)には平均値が必要です。
- 偶数個のときの処理忘れ — データ数が偶数のときは中央の2つの平均を取ります。計算問題でうっかりどちらか一方を答えないよう注意しましょう。
📝 試験でのポイント
- 「データを小さい順に並べたとき中央に位置する値」という定義から中央値を選ぶ問題が基本形です。
- 小さなデータセットから中央値を計算させる問題が想定されます。偶数個の場合(中央2つの平均)がひっかけどころです。
- 「外れ値の影響を受けにくい代表値はどれか」という性質比較で、平均値との対比が頻出パターンです。
- 所得分布のような歪んだ分布で「平均値と中央値のどちらが実態を表すか」を問う事例問題に備えましょう。
📚 まとめ
- 中央値はデータを昇順に並べたときの真ん中の値。偶数個なら中央2つの平均を取る。
- 順位だけを使うため外れ値に頑健で、所得など偏った分布の「実感に近い中心」を表せる。
- 平均値・最頻値と並ぶ3大代表値であり、対称な分布では3つがほぼ一致、偏った分布ではずれる。
- 「真ん中 = 中央値、最多 = 最頻値、合計÷個数 = 平均値」の区別が試験の基本です。
