コインを10回投げたら表は何回出るでしょうか。5回が一番ありそうですが、4回や6回もよく起こり、0回や10回はめったに起きません。この「成功か失敗かの試行を繰り返したときの成功回数」の確率をきちんと計算できるようにしたのが二項分布です。ベルヌーイ分布との関係、期待値と分散、正規分布への近づき方まで計算例つきで解説します。

📖 ひと言でいうと

二項分布とは、「成功確率pの独立な試行をn回繰り返したとき、成功が何回起きるか」を表す離散型の確率分布です。コイン投げ・くじ引き・広告のクリックなど、結果が「成功/失敗」の2通りしかない試行の回数集計に使われます。

10本に1本当たりが入っているくじを10回引く場面を想像してください。当たりの回数は0回のことも3回のこともありますが、それぞれが「どのくらいの確率で起きるか」には明確な法則があります。その法則を式にしたものが二項分布です。

🖼 1枚でわかる二項分布

二項分布 = n回の試行で成功が何回起きるかの確率分布
  • 前提 — 各試行は成功/失敗の2値・成功確率pで一定・互いに独立
  • 確率 — P(成功k回) = nCk × pのk乗 × (1-p)の(n-k)乗
  • 期待値と分散 — 期待値np、分散np(1-p)
  • つながり — n=1ならベルヌーイ分布。nが大きいと正規分布に近づく
つくもち屋「G検定対策」SUMMARY

📘 公式テキストの説明

二項分布 は本書の章節記事では正式な定義段落が用意されていません。以下は、シラバスの位置づけと関連用語から再構成した補足解説です。

二項分布は、シラバスの「AIに必要な数理・統計知識」で確率分布・ベルヌーイ分布・正規分布・ポアソン分布などと並んで挙げられるキーワードです。離散型確率分布の代表例として、「1回の試行(ベルヌーイ分布)をn回束ねたものが二項分布」「nが大きくなると正規分布で近似できる」という分布同士のつながりの中で理解することが求められます。

🔍 しっかり理解する

成り立つための3条件

二項分布が使えるのは、次の条件を満たす試行(ベルヌーイ試行)の繰り返しです。

💡 ポイント
  • 各試行の結果が「成功/失敗」の2通りしかない
  • 成功確率pがどの試行でも一定である
  • 各試行が互いに独立である(前の結果が次に影響しない)

コイン投げはこの典型ですが、「トランプを戻さずに引く」ような試行は、引くたびに確率が変わるため二項分布にはなりません。条件の確認が適用の第一歩です。

確率の計算式とその意味

n回中ちょうどk回成功する確率は次の式で求められます。

P(X = k) = nCk × pのk乗 × (1 − p)の(n − k)乗

pのk乗 × (1−p)の(n−k)乗は「特定の順番でk回成功・n−k回失敗する確率」、nCk(組み合わせの数)は「そのk回がn回のどこに配置されるかの場合の数」です。たとえばコインを3回投げて表がちょうど2回出る確率は、3C2 × (1/2)の2乗 × (1/2)の1乗 = 3 × 1/8 = 3/8 = 37.5%。表2回の並び方(表表裏・表裏表・裏表表)が3通りあることが3C2 = 3に対応しています。

10回投げでちょうど5回表の確率なら、10C5 = 252通りなので252 ÷ 1024 ≒ 24.6%です。「一番ありそうな5回」でさえ4回に1回程度しか起きない、と分かるのが分布で考える面白さです。

期待値・分散と、他の分布へのつながり

二項分布の期待値はnp、分散はnp(1 − p)です。10回投げ(p = 0.5)なら期待値は5回、分散は2.5(標準偏差約1.58回)となります。

ベルヌーイ分布
1回の試行の成功/失敗(n=1の二項分布)
二項分布
n回繰り返したときの成功回数
正規分布へ
nが大きいと釣鐘型に近づき正規近似できる

n = 1の二項分布がベルヌーイ分布であり、逆に二項分布は「独立なベルヌーイ試行の和」です。またnを大きくしていくとヒストグラムの形は左右対称の釣鐘型に近づき、正規分布で近似できるようになります(中心極限定理の具体例)。さらに「nが非常に大きくpが非常に小さい」場合はポアソン分布で近似できる、というつながりも覚えておくと分布の全体地図が描けます。

分布の形はpによっても変わります。p = 0.5なら期待値を中心に左右対称、pが0.5から離れるほど山は左右どちらかに寄った非対称な形になります。ただし非対称な場合でも、nを大きくすれば形は次第に対称な釣鐘型へ近づいていきます。

💡 具体例で考える

Web広告のクリック数は二項分布のモデル化がよく当てはまる例です。クリック率p = 2%の広告を1,000回表示したとき、クリック数は二項分布に従うとみなせます。期待値はnp = 20回、標準偏差は√(1000 × 0.02 × 0.98) ≒ 4.4回なので、「だいたい20回前後、悪くても10回強、よくても30回弱」という見積もりが立ちます。A/Bテストで新旧デザインのクリック数の差が偶然の範囲か判定する際も、この二項分布の考え方が土台になります。

品質検査でも使われます。不良率1%の工程から100個を抜き取ったとき、不良品が0個で済む確率は(0.99)の100乗 ≒ 36.6%しかありません。「1%だから100個中1個くらい」という直感を、「0個も1個も2個もそれなりに起きる」という分布の見方に更新してくれます。

⚠️ よくある誤解・紛らわしい用語

💡 ポイント
  • ベルヌーイ分布との混同 — ベルヌーイ分布は「1回」の試行の分布、二項分布は「n回の合計成功回数」の分布です。n = 1の二項分布がベルヌーイ分布、という包含関係で覚えましょう。
  • 正規分布との混同 — 二項分布は成功回数という「とびとびの値」を扱う離散型、正規分布は連続型です。nが大きいときに近似関係が生まれるだけで、別の分布です。
  • 独立性の見落とし — くじを戻さずに引く場合など、試行ごとに確率が変わる状況では二項分布は使えません(この場合は超幾何分布という別の分布になります)。
  • 「期待値どおりに起こる」という誤解 — 期待値npはあくまで平均的な回数で、実際の結果は分散np(1-p)の分だけばらつきます。

📝 試験でのポイント

💡 ポイント
  • 「成功確率pの独立な試行をn回行ったときの成功回数が従う分布」という定義から二項分布を選ぶ問題が基本形です。
  • 期待値np・分散np(1-p)は数値を当てはめる計算問題として問われやすいポイントです。
  • 「n = 1の二項分布はベルヌーイ分布」「nが大きいと正規分布で近似できる」という分布間の関係は正誤問題の定番想定です。
  • コイン投げやくじ引きの小さな計算(3回中2回成功の確率など)は、nCkの意味を理解していれば確実に得点できます。

📚 まとめ

💡 ポイント
  • 二項分布は「成功確率p・独立なn回の試行」での成功回数が従う離散型確率分布。
  • 確率はnCk × pのk乗 × (1-p)の(n-k)乗、期待値はnp、分散はnp(1-p)。
  • n = 1ならベルヌーイ分布、nが大きければ正規分布に近づく——分布同士のつながりで覚える。
  • クリック数・品質検査など「2値の結果の回数集計」に幅広く使える、離散分布の代表格です。