このシリーズではE資格対策として、シラバスの内容を項目別にまとめています。

E資格まとめ

試験概要 ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する。 1.応用数学 (1)確率・統計 (2)情報理論 2.機…

深層強化学習の概要

深層強化学習(Deep Reinforcement Learning)は、深層学習(Deep Learning)と強化学習(Reinforcement Learning)を組み合わせたものです。基本的に、エージェントは環境と相互作用し、その結果として報酬を得るプロセスを通じて学習します。エージェントの目標は、報酬の累積を最大化することです。

強化学習では、エージェントは現在の状態を観測し、行動を選択します。その行動に基づいて環境は次の状態と報酬を提供します。これらの結果からエージェントは学習し、次回の行動選択を改善します。

深層学習はこのプロセスに強力な機能を追加します。特に、ニューラルネットワークを用いることで、エージェントは観測を高次元で表現でき、複雑な状態と行動空間を扱うことができます。結果として、深層強化学習は複雑な問題、特に画像認識や自然言語処理のような問題に対して高い性能を発揮します。

深層強化学習のキーワードには、エージェント、環境、報酬、状態、行動、Q学習、ポリシー、ニューラルネットワークなどがあります。

強化学習の基本的な数式は報酬関数とバリュー関数を使用します。報酬関数 R(s, a, s’) は状態sで行動aを取った後の次の状態s’に対する報酬を示します。バリュー関数 V(s) は状態sから開始して最適なポリシーを遵守するときに得られる報酬の期待値を示します。

報酬関数のコードは次の通りです:

\begin{equation} R(s, a, s’) \end{equation}

バリュー関数のコードは次の通りです:

\begin{equation} V(s) = \max_a \sum_{s’} P(s’ | s, a)[R(s, a, s’) + \gamma V(s’)] \end{equation}

γは割引率を表します。。これは将来の報酬が現在の報酬に比べてどれだけ価値があるかを決定します。

AlphaGo

AlphaGoは、DeepMind社(Googleの子会社)が開発した囲碁をプレイするための人工知能プログラムです。2016年に世界チャンピオンの李世石と対戦し、5ゲーム中4ゲームを勝ち取るという歴史的な成果を達成しました。これは、複雑なゲームである囲碁でAIが人間のトッププレーヤーを破った初めての例であり、AIの能力について世界中に衝撃を与えました。

AlphaGoの成功は、深層学習と強化学習の組み合わせ、特に深層強化学習によるものです。AlphaGoは大量の囲碁の局面からニューラルネットワークを訓練し、その後、自己対戦を通じて強化学習を行いました。これにより、AlphaGoは自身のプレイを改善し、人間のプレーヤーを超えるレベルに達することができました。

AlphaGoの技術的なキーワードには、モンテカルロ木探索(MCTS)、深層学習、強化学習、ポリシーネットワーク、バリューネットワークが含まれます。

  • モンテカルロ木探索は探索アルゴリズムで、最良の手を選択します。
  • ポリシーネットワークはある局面でどの手を打つかを決定します。
  • バリューネットワークは現在の局面が最終的に勝つか負けるかを評価します。

これらの技術を組み合わせることで、AlphaGoは囲碁の高度な戦略とタクティクスを学習することができました。


AlphaGo Zero

AlphaGo Zeroは、AlphaGoの原則を踏襲しながらも、いくつかの重要な改良点があります。

  1. 完全にゼロから学習: AlphaGo Zeroは、最初はランダムなプレイから始まり、自分自身と対戦しながら学習していく、完全なゼロからの学習を行います。具体的には、人間の対局データを用いず、初期のプレイはランダムで、その後自己対戦を繰り返すことで強化学習を行い、プレイの質を向上させていきます。
  2. 単一のニューラルネットワーク: AlphaGo Zeroは、ポリシーネットワークとバリューネットワークを統合した単一のニューラルネットワークを使用します。このネットワークは、現在の盤面から次の手を決定し、同時にその盤面が最終的に勝つか負けるかを予測します。
  3. 単純化された入力: AlphaGo Zeroのネットワークの入力は、現在と過去の盤面の状態と、現在のプレーヤーだけで、AlphaGoが使用していた多数の手作り特徴は必要ありません。
  4. モンテカルロ木探索の改善: AlphaGo Zeroは、すべての子ノードを評価する代わりに、選択された一部のノードだけを評価します。これにより探索の効率性が向上します。

これらの改良により、AlphaGo Zeroは少ない計算量でより高い性能を達成しました。実際、40日間の学習でAlphaGoのバージョン(李世乭9段を破ったバージョン)を上回るレベルに達しました。これは、人間の知識に依存せず、強化学習と深層学習の組み合わせだけで、あらゆる知識を獲得できることを示しています。


AlphaZero

AlphaZeroはDeepMindが開発した一般的な強化学習アルゴリズムで、AlphaGo Zeroをさらに一般化したものと考えることができます。囲碁だけでなく、チェスや将棋といった異なる種類のゲームに適用可能です。

以下に、AlphaZeroの主な特徴を述べます。

  1. ゲームに依存しない一般的なアルゴリズム: AlphaZeroはあらゆる完全情報ゲームに適用可能な一般的なアルゴリズムです。この特性は、多種多様な問題解決において強化学習が適用可能であることを示しています。
  2. 自己対戦による学習: AlphaZeroは、初期のランダムなプレイから始めて自己対戦を通じて学習を行い、そのプレイの品質を向上させていきます。これにより、ゲームに対する事前知識が全くない状態からでも、人間のトッププレーヤーを凌ぐレベルまで到達することができます。
  3. 深層学習と強化学習の組み合わせ: AlphaZeroは、深層学習と強化学習を組み合わせることで、ゲームの戦略を学習します。深層学習はゲームの状況を解析し、強化学習は最適な手を選択するための戦略を獲得します。
  4. モンテカルロ木探索: AlphaZeroは、次の手を決定するためにモンテカルロ木探索を用いています。これは、ある局面から最終的な勝利に繋がる最善の手を見つけるための手法です。

AlphaZeroは囲碁、チェス、将棋で人間世界チャンピオンレベルのプレイを達成しました。特に、将棋とチェスでは既存の最強のAIエンジンであるStockfishやElmoを破るパフォーマンスを発揮しました。これは、AlphaZeroの一般的な学習アルゴリズムが、特定のゲームに特化したアルゴリズムさえも超えることが可能であることを示しています。

A3C


概要


A3C(Asynchronous Advantage Actor-Critic)は、深層強化学習の一種で、効率的に学習することができる強力な手法です。A3Cは、DeepMindによって開発され、多数の並列エージェントを使用して非同期に学習します。そのため、A3Cは、早期のDQN(Deep Q-Network)のような手法よりも効率的に学習することができます。

A3Cの主な特徴は以下の通りです:

  • 非同期学習: A3Cでは、複数のエージェントが異なる環境で同時に学習します。これにより、経験の多様性が増し、学習が安定化します。
  • アクター・クリティック法: アクター・クリティック法は強化学習のフレームワークの一つで、エージェント(アクター)の行動を評価するクリティックが存在します。A3Cはこのフレームワークを用い、行動ポリシー(アクター)と価値関数(クリティック)を同時に学習します。
  • アドバンテージ関数の使用: アドバンテージ関数は、ある行動が平均的な行動よりもどれだけ良いかを評価します。A3Cはこの関数を使用して、方策勾配法を更新します。

A3Cの主なキーワードには、非同期学習、アクター・クリティック法、アドバンテージ関数、方策勾配法が含まれます。


学習方法

具体的な学習過程は以下のようになります。

  1. 各エージェントは自身のポリシー$\pi(a|s;\theta)$と価値関数$V(s;\theta_v)$を用いて独自の環境と相互作用します。ここで、$\theta$と$\theta_v$はそれぞれポリシーと価値関数のパラメータです。
  2. エージェントは行動を選択し、その結果として報酬と新たな状態を観測します。
  3. エージェントは観測結果を用いてアドバンテージ関数と価値関数の損失を計算します。
  4. 損失を用いてエージェントはパラメータ$\theta$と$\theta_v$を更新します。
  5. 上記のステップをエージェントがそれぞれ独立して反復します。

A3Cの主要なキーワードは、非同期学習、アドバンテージ関数、アクター・クリティック法、方策勾配法です。

アドバンテージ関数は以下の通りです:

\begin{equation} A(s, a) = Q(s, a) – V(s) \end{equation}

ここで、$A(s, a)$はアドバンテージ関数、$Q(s, a)$は行動価値関数、$V(s)$は状態価値関数を示します。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございました。