このシリーズではE資格対策として、シラバスの内容を項目別にまとめています。

E資格まとめ

試験概要 ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する。 1.応用数学 (1)確率・統計 (2)情報理論 2.機…

Wavenet

Wavenet

Wavenetは、Google DeepMind社が開発した革新的な音声生成モデルです。

まず、Wavenetの主な機能として、テキストから人間のような自然な音声を生成することができます。このtext-to-speech(TTS)技術は、英語と中国語など複数の言語で高い性能を発揮し、既存のモデルを上回る結果を示しています。Google Homeなどの製品での利用が確認されていることからも、その実用性の高さがうかがえます。

Wavenetの設計は、自己回帰的な確率モデルに基づいており、音声サンプルの時系列を過去から未来へと順番に予測します。このため、音声認識や音楽生成など、多岐にわたる応用が可能となっています。発話者の条件付けも行えるため、1つのモデルで様々な声を生成することが可能です。話者のIDをコンテクストとして与えることで、単一のモデルで複数の話者の音声を生成することも実現しています。

さらに、Wavenetは、音声合成において必要な長いスパンの時間的依存性を処理するために、非常に広い受容野を持つdilated causal convolutionに基づくアーキテクチャを採用しています。この設計は、PixelRNNの研究成果を基にしており、高解像度な生成モデルへの適用が可能であることを示しています。

この技術により、Wavenetは今までにない高精度な性能をtext-to-speechタスクで示しており、小さな会話認識データセットに対しても有効な性能を示しています。音楽などの異なるドメインでの音声波形の生成にも有望であるとされています。

Wavenetの構成

Wavenetのアーキテクチャの核心部分に位置するのがdilated causal convolutionです。ここでは主に以下の特徴があります。

  1. Causal Convolution: これは、過去の入力データだけを使って畳み込む手法で、時系列の未来の情報が現在の計算に影響を与えないように設計されています。
  2. Dilated Convolution: causal convolutionの受容野を広げるために、dilationを大きく取り、具体的には層の深さに対して2のべき乗に設定します。これにより、少ないパラメータで長い時間の特徴を捉えることができます。
  3. 効率的な計算: dilated causal convolutionはRNNのような再帰結合を持たないため、時間方向の計算をRNNに比べて効率的に行うことができます。

音声波形のデータ量を削減するために、mu-lawアルゴリズムによって対数スケールに変換し、256階調として量子化する手法が採用されています。この再量子化は、計算量の削減に貢献していますが、特に会話データにおいて、波形の質はほとんど変わらないと報告されています。

コンテクストの与え方

Wavenetは、コンテクストに応じてデータを生成する枠組みを持っており、以下の2種類のコンテクストが提案されています。

  1. Global Context: これは時系列でない固定のコンテクストを想定しており、例えば話者のIDなどが該当します。コンテクストのベクトル表現が時間方向にブロードキャストされます。
  2. Local Context: こちらはコンテクストが時系列として与えられる場合を想定しており、言語学的な特徴量や音素的特徴量などが使用されます。ここでは、コンテクストの時系列を出力の時間的解像度に合わせてアップサンプルする操作が含まれます。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございました。