コイン投げの表か裏か、メールのクリック有無、画像が猫か猫でないか——結果が2通りしかない現象を表すのがベルヌーイ分布です。あらゆる確率分布の中で最もシンプルでありながら、二項分布や機械学習の2値分類の土台になる重要キーワードです。

📖 ひと言でいうと

ベルヌーイ分布とは、結果が「成功(1)」か「失敗(0)」の2通りしかない1回の試行を表す確率分布で、成功の確率pだけで形が決まります。

たとえば「表が出る確率0.5のコインを1回投げる」「開封率30%のメールを1通送る」といった、答えがイエスかノーの一発勝負を確率の言葉で表したものです。

🖼 1枚でわかるベルヌーイ分布

ベルヌーイ分布 = 結果が2通り(0か1)の1回の試行
  • 定義 — P(X=1)=p、P(X=0)=1−p。パラメータは成功確率pのみ
  • 期待値 — p(検算: p=0.3なら期待値0.3)
  • 分散 — p(1−p)。p=0.5のとき最大値0.25
  • 拡張 — ベルヌーイ試行をn回繰り返した成功回数が二項分布
  • AIとの接点 — 2値分類の出力(確率p)のモデル化に使われる
つくもち屋「G検定対策」SUMMARY

📘 公式テキストの説明

ベルヌーイ分布は、公式テキストでは単独の解説段落が置かれておらず、「AIに必要な数理・統計知識」の章で確率分布・二項分布・ポアソン分布などと並ぶ統計キーワード群のひとつとして挙げられています。

そのため本記事では、統計学での標準的な定義に沿って解説します。ポイントは「二項分布・ポアソン分布といった離散分布ファミリーの最小単位がベルヌーイ分布である」という位置づけを押さえることです。1回の試行を表すベルヌーイ分布が理解できれば、それを積み重ねた分布(二項分布)や、その極限(ポアソン分布)も一本の線でつながります。

🔍 しっかり理解する

定義: パラメータはpひとつだけ

確率変数Xが1(成功)を確率pで、0(失敗)を確率1−pでとるとき、Xはベルヌーイ分布に従うといいます。

💡 ポイント
  • P(X = 1) = p
  • P(X = 0) = 1 − p

pは0以上1以下の値で、この1つの数字だけで分布が完全に決まります。「成功/失敗」はあくまで便宜上の呼び方で、「表/裏」「クリックする/しない」「不良品/良品」など、2値の現象なら何にでも当てはめられます。この1回きりの試行をベルヌーイ試行と呼びます。名前は17世紀スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイに由来します。なお、結果が3通り以上ある1回の試行(サイコロの目など)は、ベルヌーイ分布を多値に拡張したカテゴリカル分布で表され、多クラス分類のモデル化に対応します。

期待値と分散を検算する

ベルヌーイ分布の期待値と分散は次のとおりです。

  • 期待値: E(X) = 1 × p + 0 × (1 − p) = p
  • 分散: V(X) = p(1 − p)

p = 0.3(開封率30%のメール)で検算すると、期待値は0.3。分散は 0.3 × 0.7 = 0.21 です。分散 p(1−p) は p = 0.5 のとき最大値 0.5 × 0.5 = 0.25 になります。これは「五分五分のときが最も結果を予想しにくい(ばらつきが大きい)」という直感と一致します。逆にpが0や1に近いと結果はほぼ確定しているので、分散は0に近づきます。

二項分布・ポアソン分布へのつながり

ベルヌーイ分布の真価は、より複雑な分布の「部品」になることです。

ベルヌーイ分布
1回の試行(成功か失敗か)
二項分布
同じ試行をn回繰り返した成功回数
ポアソン分布
nが大・pが小の極限(まれな事象の回数)

つまり二項分布は「ベルヌーイ試行のn回分の合計」であり、n = 1 の二項分布はベルヌーイ分布そのものです。さらに試行回数が多く成功確率が小さい極限がポアソン分布になります。

機械学習との接点: 2値分類

ロジスティック回帰やニューラルネットワークの2値分類では、モデルの出力(シグモイド関数を通した0〜1の値)を「正例である確率p」とみなします。これは「正解ラベルがパラメータpのベルヌーイ分布に従う」というモデル化にほかなりません。このベルヌーイ分布の尤度を最大化する(対数をとって符号を反転すると交差エントロピー誤差の最小化になる)のが、2値分類の学習の標準的な定式化です。

パラメータ推定の練習台としてもベルヌーイ分布は最適です。表の出る確率が未知のコインを10回投げて3回表が出たとき、「観測結果が最も起こりやすくなるpはいくつか」を求めるのが最尤法で、答えは直感どおり p = 3 ÷ 10 = 0.3(観測された割合)になります。シンプルな分布だからこそ、「データからパラメータを推定する」という統計・機械学習の基本動作を最短距離で体験できます。

💡 具体例で考える

Webサービスの広告配信を考えます。あるバナー広告のクリック率が2%なら、1人のユーザーへの表示は「p = 0.02のベルヌーイ試行」としてモデル化できます。これを1万回表示したときのクリック総数は二項分布に従い、期待値は 10000 × 0.02 = 200回と計算できます。A/Bテストで「バナーAとBのどちらのpが大きいか」を統計的に比較する枠組みも、根っこはベルヌーイ分布です。

もうひとつ、工場の品質検査では「1個の製品が不良品である(1)か良品である(0)か」をベルヌーイ分布で表せます。不良率p = 0.01なら、期待値0.01、分散 0.01 × 0.99 = 0.0099。この積み重ねから「100個中の不良品数の分布」(二項分布)が導かれ、抜き取り検査の設計につながります。

⚠️ よくある誤解・紛らわしい用語

💡 ポイント
  • ベルヌーイ分布と二項分布の混同 — ベルヌーイ分布は「1回」の試行、二項分布は「n回繰り返したときの成功回数」です。試験で最も狙われやすい区別です。
  • pは0.5とは限らない — コイン投げの印象から「半々の分布」と思い込みがちですが、pは0〜1の任意の値をとれます。
  • 正規分布との違い — ベルヌーイ分布は0と1しかとらない離散分布で、連続値をとる正規分布とは根本的に異なります。
  • 「成功」は良い意味とは限らない — 不良品の発生を「成功(1)」と置くこともあり、単に注目する側の結果を1と呼んでいるだけです。

📝 試験でのポイント

💡 ポイント
  • 「結果が2通りの1回の試行を表す分布はどれか」という定義選択の形式が想定されます(選択肢に二項分布・ポアソン分布・正規分布が並ぶイメージ)。
  • 期待値p・分散p(1−p)は、具体的な数値(p=0.3で分散0.21など)を選ばせる形で問われ得ます。
  • 「ベルヌーイ試行をn回繰り返した成功回数の分布は何か」(答え: 二項分布)という分布間の関係も要チェックです。
  • 2値分類の出力のモデル化にベルヌーイ分布が使われる、という機械学習との接続も押さえておくと安心です。

📚 まとめ

💡 ポイント
  • ベルヌーイ分布は、結果が0か1の2通りしかない1回の試行を表す最も基本的な離散確率分布です。
  • パラメータは成功確率pのみで、期待値はp、分散はp(1−p)です。
  • ベルヌーイ試行をn回繰り返した成功回数が二項分布で、その極限にポアソン分布があります。
  • 機械学習の2値分類は「ラベルがベルヌーイ分布に従う」というモデル化の上に成り立っています。