このシリーズではE資格対策として、シラバスの内容を項目別にまとめています。
グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network: GNN)
グラフニューラルネットワークの概要
グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network: GNN)は、グラフデータを処理するためのディープラーニング手法です。GNNは各ノードが他のノードとの関係を学習する能力を持っています。これはソーシャルネットワーク、化学構造、プログラムの依存関係など、リアルワールドの多くのデータがグラフとして表現可能であることから非常に重要です。
GNNはノードとエッジから成るグラフ上で動作します。各ノードは特徴ベクトルによって表され、エッジはノード間の関係を表します。GNNは局所的な情報と隣接するノードからの情報を組み合わせて、各ノードの新しい特徴を学習します。これにより、GNNはノード間の複雑なパターンを捉えることができます。
グラフニューラルネットワークの基本的な動作は以下の通りです。まず、各ノードの特徴ベクトルが初期化されます。次に、各ノードは隣接するノードの特徴から情報を収集し、自身の新しい特徴を計算します。これは”メッセージパッシング”とも呼ばれます。このプロセスが一定の反復回数または収束条件まで行われます。
このプロセスを数式で表現すると、以下のようになります。
ノード v の新しい特徴ベクトル h_v^{(l)} は次のように計算されます:
具体的な問題に応じて、様々なバリエーション(GCN, GraphSAGE, GATなど)が存在します。
グラフ畳み込みネットワーク(Graph Convolutional Network: GCN)
グラフ畳み込みネットワーク(Graph Convolutional Network: GCN)は、グラフ上での畳み込みを行うニューラルネットワークの一種です。GCNは、グラフのノード間の接続性や各ノードの特徴を考慮して、より高度な特徴を学習することができます。一般的な畳み込みニューラルネットワークが画像データなどのグリッド状のデータに対して適用されるのに対し、GCNは構造的に複雑なグラフデータに対して適用されます。
GCNの重要な特徴は「畳み込み」です。ノードの特徴ベクトルがその隣接ノードからの情報を取り入れることにより更新されます。そして、各ノードはその隣接ノードの情報を「畳み込む」ことで、自身の新たな特徴ベクトルを生成します。これは、「メッセージパッシング」の形式をとります。
GCNの基本的な計算ステップは次のようになります:
- 集約ステップ:各ノードはその隣接ノードから特徴ベクトルを集約します。つまり、隣接ノードの特徴ベクトルをすべて足し合わせます。これはグラフ上での情報の伝播を表しています。
- 変換ステップ:集約された特徴ベクトルに重み行列を掛けて変換を行います。そして、非線形の活性化関数を適用します。
GCNでのノードの特徴更新の数式は以下の通りです:
これらのステップが反復的に行われることで、GCNはノード間の関係を捉えながらグラフ全体の特徴を学習します。
GraphSAGE(Graph Sample and Aggregrate)
GraphSAGE(Graph Sample and Aggregrate)もまた、グラフニューラルネットワークの一種です。GraphSAGEの主な特徴は、入力として与えられたグラフから情報を学習し、それを用いて、未知のノード(つまり、学習時には存在しなかったノード)の特性を推定することができる点です。これは「誘導的学習」(inductive learning)と呼ばれる手法で、グラフデータに対する強力な学習能力を持ちます。
GraphSAGEの基本的なアルゴリズムは次の3ステップで構成されています:
- ノードのサンプリング:ノードの近傍から固定数のノードをサンプリングします。このステップでは、全ての近傍ノードを考慮する代わりに、一部の近傍ノードのみをランダムに選び出します。これにより、計算量を大幅に削減することが可能になります。
- 特徴の集約:サンプリングした近傍ノードの特徴を集約します。集約関数は、平均(mean)、最大値(max)、またはLSTMなどを用いて定義することができます。
- 特徴の更新:集約した近傍の特徴と対象ノード自身の特徴を結合し、全結合層(Dense layer)を用いて新たな特徴に更新します。
この3ステップを複数のレイヤーに渡って繰り返すことで、GraphSAGEは各ノードの特徴をその近傍の情報を用いて更新します。
GraphSAGEでのノードの特徴更新の数式は以下の通りです:
これらのステップにより、GraphSAGEはグラフ上で局所的な情報を効率的に集約し、各ノードの特徴を更新します。また、未知のノードに対してもその特徴を推定することができます。
GAT(Graph Attention Network)
GAT(Graph Attention Network)はグラフニューラルネットワークの一種で、ノードの特徴を更新する際に「注意機構」(attention mechanism)を用いています。各ノードは自身の近傍ノードの情報を集約しますが、その際に全ての近傍ノードの情報を同等に扱うのではなく、それぞれの近傍ノードへの「注意度」に基づいて情報を重み付けします。これにより、重要な近傍ノードからの情報に対しては大きな重みを、それ以外のノードからの情報に対しては小さな重みを付けるように学習します。
GATの基本的なアルゴリズムは以下のステップで構成されています:
- 注意度の計算:各ノードは自身と各近傍ノードとの間の注意度を計算します。これは、対象ノードと近傍ノードの特徴ベクトルを結合し、全結合層を通すことで行います。そして、注意度はソフトマックス関数を通すことで正規化されます。
- 特徴の集約:近傍ノードの特徴ベクトルを注意度で重み付けし、その結果を集約します。
- 特徴の更新:集約した近傍の特徴と対象ノード自身の特徴を結合し、全結合層を用いて新たな特徴に更新します。
GATでのノードの特徴更新の数式は以下の通りです:
GATは注意機構を利用することで、各ノードがどの近傍ノードからの情報に注目すべきかを学習し、その結果、より精度の高いグラフ上での予測が可能となります。
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