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多次元尺度構成法
多変量解析の一手法。主成分分析の様に分類対象物の関係を低次元空間における点の布置で表現する手法である。
多次元尺度構成法とは
多次元尺度構成法とは、対象間の類似性をポジショニングマップなどのグラフで視覚化する分析手法です。複数の変数に対応する多変量解析の一種であり、大量のデータから対象間の関係性を把握する目的で主に使われます。
多次元尺度構成法は、以下のような流れで実施します。
・比較する対象ごとに類似性を示すデータを作成する。このデータは距離行列と呼ばれる。
・距離行列から各対象の座標値を算出する。この座標値は類似性が高いほど近く、低いほど遠くなるように設定される。
・座標値をもとにポジショニングマップなどのグラフを作成する。グラフでは対象間の位置関係だけに注目し、軸自体には意味がないことに注意する。
多次元尺度構成法の活用例
・自社製品と他社製品のポジショニングマップを作成する
この場合、自社製品と他社製品を比較する対象として、価格や品質、機能などの属性を設定します。それらの属性に関して、消費者にアンケート調査を行い、各製品間の類似性を評価してもらいます。その結果から距離行列を作成し、多次元尺度構成法で座標値を算出します。座標値からポジショニングマップを作成すると、自社製品と他社製品の相対的な位置関係が分かります。これにより、自社製品の強みや弱み、競合との差別化要因などが明確になります。
・顧客セグメント別のポジショニングマップを作成する
この場合、顧客セグメントを比較する対象として、年齢や性別、収入などの属性を設定します。それらの属性に関して、自社製品やサービスに対する満足度や利用頻度などの指標を測定します。その結果から距離行列を作成し、多次元尺度構成法で座標値を算出します。座標値からポジショニングマップを作成すると、顧客セグメント間の相対的な位置関係が分かります。これにより、ターゲット層やニーズ層の特徴や傾向などが明確になります。
・市場動向や消費者ニーズのポジショニングマップを作成する
この場合、市場動向や消費者ニーズを比較する対象として、トレンドや価値観などの要素を設定します。それらの要素に関して、市場調査や文献調査などでデータ収集し分析します。その結果から距離行列を作成し、多次元尺度構成法で座標値を算出します。座標値からポジショニングマップを作成すると、市場動向や消費者ニーズ間の相対的な位置関係が分かります。これにより、市場全体や消費者全体へアピールできるメッセージやコンテンツなどが明確になります。
多次元尺度構成法の実施手順
多次元尺度構成法を実施する手順は、以下のようになります 。
・比較する対象ごとに類似性を示すデータを作成する。このデータは距離行列と呼ばれる。
・距離行列から各対象の座標値を算出する。この座標値は類似性が高いほど近く、低いほど遠くなるように設定される。
・座標値をもとにポジショニングマップなどのグラフを作成する。グラフでは対象間の位置関係だけに注目し、軸自体には意味がないことに注意する。
分析用データの作成方法は、以下のようになります 。
・アンケート調査を利用する場合
・比較する対象ごとにアンケート項目を設定し、消費者や顧客などの回答者に各対象間の類似性や関係性を評価してもらう。評価は5段階や7段階などで行う。
・回答結果から各対象間の平均評価値や中央値などを算出し、距離行列としてまとめる。距離行列では数値が小さいほど類似性が高く、大きいほど低いことを示す。
・数量的データを利用する場合
・比較する対象ごとに数量的指標(価格や品質、スペックなど)を設定し、市場調査や文献調査などでデータ収集し分析する。
・収集したデータから各対象間のユークリッド距離やマハラノビス距離などを算出し、距離行列としてまとめる。距離行列では数値が小さいほど類似性が高く、大きいほど低いことを示す。
ポジショニングマップの生成方法
・座標値から散布図を作成する。散布図では各対象が点で表される。
散布図からポジショニングマップを作成する。ポジショニングマップでは各対象がラベルやアイコンで表される。
・ポジショニングマップから軸の意味付けを行う。軸の意味付けでは各対象がどんな属性や特徴で分かれているか考察し、縦軸と横軸に名前や単位をつける。
多次元尺度構成法の特徴
・複雑な情報を分かりやすく視覚化できる
多次元尺度構成法は、どんなに複雑なデータでも分かりやすいグラフに変換することができます。100列以上のデータでも問題ありません。そのため全体から対象間の関係性を俯瞰して検討したい際に、多次元尺度構成法が役立ちます。
・ポジショニングマップが簡単に作れる
多次元尺度構成法を活用すれば、ポジショニングマップを簡単に作ることができます。ポジショニングマップはマーケティングの分野で活用されるグラフです。他社製品と自社製品間の関係性を検証する際や、既存の製品から差別化した製品を開発する際の指標としてしばしば活用されています。まずはポジショニングマップで全体を俯瞰し方向性を決めてから、詳細に分析していくという流れが一般的です。
多次元尺度構成法の注意点
・データの準備にひと手間かかる
多次元尺度構成法を行うためには分析用データを作成する必要があるため、注意が必要です。各対象間の類似性を示すデータの形は一般的ではないため、慣れていないと混乱しやすいためです。アンケート調査で分析用データを作成する場合も、比較する対象の数が増えれば増えるほど質問数が増えてしまうため注意が必要です。
・関係性の細かい検証は困難
多次元尺度構成法は対象間の関係性(類似性)を分かりやすく視覚化することが目的であるため、詳しく検証することはできません。例えば「たまご」が他のネタと類似性が低いと認識されている理由が知りたい場合は、別の分析手法を使う必要があります。多次元尺度構成法は複雑な関係性を分かりやすく表現する分析手法であり、細かく調べる分析手法ではありません。
・比較する対象の数を適切にする必要がある
多次元尺度構成法では比較する対象の数も重要な要素です。比較する対象が少なすぎる場合は有意な結果が得られませんし、逆に多すぎる場合はグラフ上で見分けられません。一般的には5~20個程度の対象が適切とされています 。
比較する対象の数の適正化
比較する対象の数を適切にするためには、以下のような方法があります。
・対象をカテゴリーごとに分ける
比較する対象が多すぎる場合は、カテゴリーごとに分けてグループ化することで見やすくできます。例えば、飲料メーカーが自社製品と他社製品のポジショニングマップを作成する場合、飲料の種類(炭酸飲料、果汁飲料、乳製品飲料など)ごとに色分けや形分けしてグラフ上で区別できます。
・対象をサンプリングする
比較する対象が多すぎる場合は、全体から代表的なものを抽出してサンプリングすることで見やすくできます。例えば、顧客セグメント別のポジショニングマップを作成する場合、全体からランダムサンプリングや層化抽出法などを用いて一定数の顧客データを選び出してグラフ上で表示できます。
・対象を絞り込む
比較する対象が少なすぎる場合は、より細かいレベルで対象を絞り込むことで見やすくできます。例えば、市場動向や消費者ニーズのポジショニングマップを作成する場合、トレンドや価値観だけではなく、ライフスタイルや消費行動なども考慮してグラフ上で表示できます。
多次元尺度構成法の実装
以下は、公開データであるirisデータセット を用いて多次元尺度構成法を実装する例です。irisデータセットは、3種類のアヤメの花びらとがく片の長さと幅を測定したデータです。このデータから各アヤメ間の類似性を示す距離行列を作成し、MDSで2次元に圧縮してグラフ化します。
# 必要なライブラリのインポート
import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from sklearn import manifold
from sklearn.metrics import euclidean_distances
# irisデータセットの読み込み
iris = pd.read_csv("https://raw.githubusercontent.com/mwaskom/seaborn-data/master/iris.csv")
# 花びらとがく片の長さと幅だけ抽出
X = iris.iloc[:, 0:4]
# 各アヤメ間の距離行列(ユークリッド距離)を計算
similarities = euclidean_distances(X)
# MDSオブジェクトの作成(n_componentsは圧縮後の次元数)
mds = manifold.MDS(n_components=2, dissimilarity="precomputed", random_state=1)
# 距離行列から座標値(pos)を算出
pos = mds.fit(similarities).embedding_
# 座標値から散布図(ポジショニングマップ)を作成
plt.scatter(pos[:, 0], pos[:, 1], c=iris["species"].map({"setosa": "red", "versicolor": "green", "virginica": "blue"}), label=iris["species"])
plt.xlabel("x")
plt.ylabel("y")
plt.title("Multidimensional Scaling of Iris Dataset")
plt.legend()
plt.show()
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