このシリーズではE資格対策として、シラバスの内容を項目別にまとめています。
RMSpropの概要
RMSpropの概要
RMSpropは、Adagradアルゴリズムの問題を解決するために提案されました。Adagradは勾配の二乗の累積和を使用して、学習率を調整しますが、学習が進むにつれて学習率が急速に小さくなることがあります。この問題を解決するために、RMSpropは勾配の二乗の移動平均を使用して、過去の勾配の影響を減らすように設計されました。
- 移動平均の計算: 前回の移動平均と現在の勾配の二乗から、新しい移動平均を計算します。
- パラメータの更新: 移動平均を使用して、各パラメータの学習率を調整し、パラメータを更新します。
RMSpropの更新規則は以下の数式で表されます。
\begin{align}
h_t & = \text{decay_rate} \cdot h_{t-1} + (1 – \text{decay_rate}) \cdot (g_t)^2 \\
\theta_t & = \theta_{t-1} – \frac{{\text{{lr}} \cdot g_t}}{{\sqrt{{h_t}} + \epsilon}}
\end{align}
学習率(lr): 学習の速度を制御します。大きすぎると学習が不安定になり、小さすぎると学習が遅くなります。
減衰率(decay_rate): 勾配の二乗の移動平均の減衰度を制御します。通常、0.9から0.99の間の値が使用されます。
RMSpropの特徴
- 自動学習率調整: RMSpropは各パラメータに対して個別の学習率を計算します。これにより、パラメータごとに最適な学習率が適用されるため、効率的な学習が可能です。
- 勾配の二乗の移動平均: 過去の勾配の情報を指数移動平均で取り入れます。これによって、過去の勾配の影響を適切にコントロールでき、学習の安定性が向上します。
- 学習率の急減少の回避: Adagradの問題である学習率の急激な減少を回避し、学習の途中で学習率が0に近づきすぎる問題を解決します。
RMSpropの利点
効率的な学習: 学習率の自動調整により、各パラメータが最適な速度で更新されるため、学習が効率的に行えます。
学習の安定化: 移動平均による勾配の平滑化と学習率の適切な調整により、学習プロセスが安定します。
ハイパーパラメータの柔軟性: 減衰率(decay_rate)などのハイパーパラメータは、多くの問題に対して同じ値で効果的であることが多いため、ハイパーパラメータのチューニングが容易です。
スケールの異なるパラメータへの対応: 各パラメータに対して異なる学習率が適用されるため、スケールが大きく異なるパラメータでも適切に学習が進行します。
RMSpropの実装
# 必要なライブラリをインポート
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
class RMSprop:
def __init__(self, lr=0.01, decay_rate=0.99):
self.lr = lr
self.decay_rate = decay_rate
self.h = None
def update(self, params, grads):
if self.h is None:
self.h = {}
for key, val in params.items():
self.h[key] = np.zeros_like(val)
for key in params.keys():
self.h[key] *= self.decay_rate
self.h[key] += (1 - self.decay_rate) * grads[key] * grads[key]
params[key] -= self.lr * grads[key] / (np.sqrt(self.h[key]) + 1e-7)
# 目的関数の定義
def f(x, y):
return (1/20) * x**2 + y**2
# 目的関数の勾配の定義
def gradient_f(x, y):
return np.array([x/10, 2*y])
# RMSpropオプティマイザのインスタンスを作成
optimizer = RMSprop(lr=0.3)
# パラメータの初期化
params = {"x": -7.0, "y": 2.0}
# 最適化の経路を保存するためのリスト
path = [(params["x"], params["y"])]
# 最適化ループ
for i in range(30):
# 勾配の計算
grads = {"x": gradient_f(params["x"], params["y"])[0], "y": gradient_f(params["x"], params["y"])[1]}
# パラメータの更新
optimizer.update(params, grads)
# 現在のパラメータの値を経路に追加
path.append((params["x"], params["y"]))
# 経路をnumpy配列に変換
path = np.array(path)
# 表示用のxとyの値を生成
x = np.arange(-10, 10, 0.1)
y = np.arange(-5, 5, 0.1)
X, Y = np.meshgrid(x, y)
# Zを計算するために目的関数を適用
Z = f(X, Y)
# プロットの初期化
plt.figure(figsize=(10, 8))
# 目的関数の等高線をプロット
plt.contour(X, Y, Z, levels=np.logspace(-2, 2, 20))
# パラメータの更新経路をプロット
plt.plot(path[:,0], path[:,1], 'o-', color='red')
# x軸のラベルを設定
plt.xlabel('x')
# y軸のラベルを設定
plt.ylabel('y')
# タイトルを設定
plt.title('RMSprop Optimization')
# グリッドを表示
plt.grid()
# プロットを表示
plt.show()
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。